*多くの作品は海外発表のため、English モードにてのみご覧になれます。追い追い翻訳してこちらに掲載します。

MAKI UEDA (JP / NL) 

嗅覚アーティスト

JAPAN HOUSE Sao Paulo - fotos  de Rogério Cassimiro (5)

1974年、東京生まれ。2000年よりオランダ在住。現在は、石垣島に拠点を置き、アトリエ・マキ・ウエダ を構える。http://www.pepe.okinawa

アートと嗅覚の融合を試みる、「匂いのアーティスト」。新しいアートとして注目を集める嗅覚アート・シーンの、世界的なリーディング・アーティスト。wikipediaの「嗅覚アート」 "olfacory art"の項にも代表作家の一人として名を連ねる。

慶應義塾大学環境情報学部(学部1997卒&修士1999卒)にて、藤幡正樹氏に師事し、メディア・アートを学ぶ。2000年文化庁派遣若手芸術家として、2007年ポーラ財団派遣若手芸術家として、オランダ&ベルギーに滞在。2009年よりオランダ王立美術学校&音楽院の学部間学科Art Science や、ロッテルダム美大ウィレム・デ・コーニングアカデミー、岐阜県立情報科学芸術大学院大学にて教鞭をとる。世界初の嗅覚アートの授業として知られる。国内では独自の通信講座やオンライン講座を開講し、教育普及に励む。仏グラース・インスティテュート・オブ・パフューマリー(GIP)サマーコース修了。日本味と匂い学会会員。

匂いをデータや情報としてニュートラルに、かつサイエンティフィックに扱うアプローチを特徴としている。近年は、空間、ムーブメント、そして嗅覚のクロスオーバーする領域においてインスタレーションを制作。「嗅覚のための迷路」シリーズ、「OLFACTOSCAPE」「白い闇」などがある。文脈や内容を強調するために匂いを使うのではなく、あくまでも「嗅覚」に焦点を置き、説明不要な体験を創出する。

食物、環境臭、そして体臭など、日常のありのままの匂いを素材から抽出し、「香水化」する技術を持つ。それは調理法から編み出した独自の方法でもある。

オンライン・ポートフォリオ: www.ueda.nl

オンライン CV

アトリエとオンラインスクール: www.pepe.okinawa

(海外の活動が主であるため、作家名は日本語でも統一して 「MAKI UEDA」 としている。日本語でのワークショップや講演の場合は、本名の「上田麻希」を使用。出身国表記は、「日本/オランダ」。)

 

アワード:

2009年、ワールド・テクノロジー・アワード(アート・カテゴリー)ノミネート

2016年、アート・アンド・オルファクション・アワード ファイナリスト(サダキチ・アワード)

2018年、アート・アンド・オルファクション・アワード ファイナリスト(サダキチ・アワード)

2019年、アート・アンド・オルファクション・アワード ファイナリスト(サダキチ・アワード)

 

領域:
  • 嗅覚のためのインスタレーション (含 屋外、サイトスペシフィック)
  • アート作品としての香水
  • 嗅覚と他感覚間のリサーチ・プロジェクト
  • 嗅覚のためのパフォーマンス作品
  • 嗅覚のアート・ワークショップ(子供用+大人用)
  • 嗅覚に焦点を当てたフード・アート・イベント
  • 嗅覚をテーマにした美大での授業

 

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AESTHETIC OF THE WORKS OF MAKI UEDA (2019年の文章)

はじめに

嗅覚アーティストとしてできることはまず第一に、オーディエンスのために新たな嗅覚体験を提供することであると考える。

嗅覚という感覚は、ついこの間まで生存のためにフル活用されていた。火事を察知したり、暗闇の中で敵を察知したり、食べ物の腐敗を見分けたり。香りの中でも特に薬効成分や殺菌成分のあるものを駆使し、命をつないできた。快楽的なことに使われることがあったとしたら、生殖行為に関わることくらいだったであろうが、これも実用の範疇といってもいい。

より生きやすくなった現代においてようやく、純粋な楽しみのために嗅覚を活用する余裕が出てきたといえる。つまり、歴史はそう長くない。数百年前よりパフュームが登場したことにより、匂い香りをクリエイティブに使ったり、メッセージを表現したり、マニフェストすることが可能になったのだ。

嗅覚アートは、「匂い香りを使ったアート表現」と広義に定義したとしても、まだ始まったばかりの領域である。ほんの100年ちょっとの歴史と考えて良いのではないだろうか。

以上のような経緯から、嗅覚アーティストは、匂い香りの世界の探求はひとまずパフューマリーに譲り、未知の嗅覚体験の方に焦点を当てるべきと考えている。

私自身は2005年より活動を始めている。始めた当初は誰も「嗅覚アート」という言葉を使っている人はいなかったので、わかりやすく「SCENT ART」「SMELL ART」などの言葉を使っていた。しかしある時に、匂い香りよりむしろ、嗅覚に興味があるのだと気づき、2007年ごろより「OLFACTORY ART」という言葉を使い始めた。私はもともとメディア・アート出身で、MIT周辺で使われていた「HAPTIC ART」という言葉にインスピレーションを受けたのだ。同時代的に、他の嗅覚アーティストたちもこの言葉を使い始めたようだった。

最近はたくさんの嗅覚アーティストが存在する。しかし嗅覚アートのエステティックは、まだ混沌とした状態だと言っても過言ではない。この論文には、私のスタンディング・ポイントと、エステティックを描き出そうと思う。

MY STANDING POINTS

OLFACTORY ART IS (SHOULD DEVELOP) LIKE MUSIC

嗅覚アートのオリジナリティはどこにあるのだろうか? たとえばその昔、まだ嗅覚アーティストが少ない時代、シンガポールの街の香りで作品を作った際に、「それは他の作品の真似だ」という指摘を受けたことがある。これは面白い問題を提示していた。

よく調べてみると、その作品も確かに、どこかの街の匂いをコンセプトとしていたが、アプローチやリアライゼーションの方法は全く異なっていたのだ。

このような SCENT SCAPE(街の香り)は実際、多くの嗅覚アーティストのスタートアップ時に選ばれやすいテーマである。ふと嗅覚に注意を向けると、日々歩く街が変わって見えるので、それがインスピレーションとなるのだろう。なので、そのような類の作品やワークショップは、飽きるほど存在する。同様に選ばれやすいテーマは「体臭とアイデンティ」「死の匂い」などである。つまり、身近なものか、臭くてセンセーショナルなものである。

そこで考えた。どこからどこまでが「真似」なのだろうか、と。もし私が世界で初めて SCENT SCAPE を作り、それ自体がコンセプトだと考えるならば。もう他の誰も、街をテーマとした作品をどんな形であれ作ってはいけないと考えるかもしれない。それは、私の「真似」だから。しかし、それはコンセプチャル・アートの考え方に近い。

そこで私は、嗅覚アートは音楽のようであってほしいと考えた。たとえば、ドナウ川にインスピレーションを受けた作曲家が、ドナウ川をテーマにした音楽を作ったとする。だからといって、他の誰も、ドナウ川の音楽を作ってはいけないということにはならない。ドナウ川はあくまで、インスピレーションであり、テーマではあるが、コンセプトではないのだ。

なので、SCENT SCAPE では、「街の匂い」というコンセプトがオリジナリティの中心になってはならない。作品のコンセプトは、もう一段階メタなレベルで作ろう。生徒たちにも、そう教えている。嗅覚アートでは、「ただ感じて」という作品も成り立つかもしれないが、やはりコンセプトを説明しないといけない。同じようなテーマを扱った他の作品とどこがどう違うのか、そしてどこに自分の作品のオリジナリティがあるのか、説明して欲しい。

その上でデータベースや適切な批評がそこに加われば理想的だ。たとえば嗅覚アートに、クラシックやポップなどのカテゴリーがあり、ドナウ川をテーマとしているからといって、クラシックと決まるわけではない、といったふうに。それは結果的に、センセーショナルな作品のみが注目される状態を防ぐだろう。嗅覚アートはこのように健全に発展していって欲しいと思っている。

SCENT IS NEUTRAL

匂いほど、主観的なものはない。たとえば私が体臭についての作品を作ろうと思ったらまず、「体臭の香り」を作るのだろうが、私が考える「体臭の香り」はかなりの確率で、あなたの考える「体臭の香り」とは異なる。しかも、私が作った「体臭の香り」を、あなたが私と同じように捉えるとは限らない。私が「いい匂い」と思っても、あなたが「いやな匂い」と思うかもしれないし、深く嗅ぐことさえ拒否するかもしれない。そのため、匂いに作品のコンセプトを委ねるのは頼りないように私には思える。

匂いは本来、中立的なものではないだろうか。

嗅覚アーティストはしばしば、 作品のコンセプトを香りに委ねてしまいがちである。しかし、匂いは中立と考えるのならば、作品において使用する匂いは「なんでも良い」のではないだろうか。 そのため、「匂いを変えても、コンセプトは変わらない作品」に私は挑戦している。特定の香りを必要としないので、香料会社や調香師に依存する必要もなく、ロー・コストでもある。

MY MAIN CONCEPTS

これまで14年間、その時々の条件や期待に応えながら、さまざまな作品を発表してきたが。コアとしているいくつかのコンセプトがある。それはすなわち、私のリサーチ・テーマでもある。

1: EXTRACTION & REPRESENTATION

活動初期の作品(2005〜2008あたり)は、特にこのテーマを探求している。得意とする料理から抽出法のヒントを得て、いくつかの蒸留法も含むスキルを独自に身につけ、体系化した。そのため、「何でも抽出できる魔術師」的な作家のようにも見えるが、実はそこに最終目的があるわけではない。

何でも抽出できるということは、香りをコンパクトにして遠くまで運んだり、あるいは時を超えてあらためて提示することができる、ということである。どの匂いにも、その匂いの時間軸と空間軸がある。それをずらし、異なるコンテキストを選ぶことによって、興味深い嗅覚体験が可能になる。

例:

空間軸をずらした作品: AROMASCAPE OF SINGAPORE

シンガポールの匂いを学生とリサーチし、ワークショップで抽出した上で、縮小地図にマッピングして展示した。

時間軸をずらした作品: THE JUICE OF WAR - HIROSHIMA & NAGASAKI -

1945年の広島と長崎の原爆投下後の匂いを、シミュレーションして、オリジナルなインターフェースで現代によみがえらせた。

2: DE-CONSTRUCTION & RE-CONSTRUCTION

匂いは、空間中で混ざり合うという物理特性を持っている。香りAを焚いて、その隣で香りBを焚くと、部屋の中で香りが混ざってしまい、よほど近づかない限り判別ができなくなる。その特性を利用して、空間の異なる場所に異なる香りを配置し、自由に動き回ることで香りにズーム・イン&ズーム・アウトする体験ができる空間インスタレーション群を製作している。

ズーム・インすると個々の香りを嗅ぐことができるし(DE-CONSTRUCTION)、ズーム・アウトすると混ざったトータルの香りを嗅ぐことができる(RE-CONSTRUCTION)。嗅覚をフルに使いながら、香りをより物理的にタンジブルに理解する手がかりとなる、やや教育的な作品群である。

例:

OLFACTOSCAPE - DECONSTRUCTION OF CHANEL NO. 5 -

円筒状の空間の内壁を10個のパートにわけ、各パートを単体香料で匂い付け。使用香料は、シャネル5番に使われているトップ10の香料である。真ん中に立つと、それらが混ざったトータルの香り(シャネル5番の香り)が嗅げる。

TANGIBLE SCENTS - COMPOSITION OF ROSE IN THE AIR -

ローズを構成するトップ5の成分でそれぞれ香りづけしたシャボン玉液を用意し、5台のシャボン玉マシンより飛ばす。シャボン玉を割ると、異なる香りがするが、そのあたりの野原には、全ての成分が混ざった「ローズの香り」が漂う。

3: SCENT-DRIVEN COMMUNICATION

匂いとは私たちにとってなんだろうか。動植物の世界では、匂いは生殖と生存のためのコミュニケーション・シグナル(フェロモン)である。しかし人間の世界では、そういう意味のフェロモンはないとされている。それに、冒頭に述べたように、時代の変化により、嗅覚の役割が変わりつつある。

香道のように、匂いを嗅ぎ別けながら、匂いの要素(たとえば香木のドライな部分)などを初冬の空にかけあわせながら、イメージの世界をプレーヤー同士で共有する遊びにおいては、香りは情報であると言っても過言ではない。

このような洗練された嗅覚の持ち主は、人間だけである。嗅覚の役割が時代によって変わりつつある今、この可能性をもっと探れないだろうか。

例:

1. 匂いをモールス信号的に使用

OLFACTORY GAMES

10年以上、オランダ王立美術アカデミーで嗅覚アートの授業を持っており、そこで学生に嗅覚のためのゲームを作ってもらっている。例としてまず、匂いの神経衰弱(MEMORY GAME)や匂いのハンカチ落とし(OLFACTORY DUCK DUCK GOOSE)を紹介し、プレーしてもらっている。すでに70種類以上のゲームが制作されており、学生たちの想像力はとどまるところを知らない。匂いをモールス信号のように扱うプロトタイピングの実験である。                          

2. 匂いにメタファーを乗せる

KYOTO LOVE STORY

源氏物語(約1200AC)の世界では、男女の出会いは御簾越しであり、直接話すことも許されなかった。コミュニケーションはメッセンジャーを介してか、詩歌、匂い香りを通して。このコミュニケーション・プロトコルに則った、ブラインド・デート・イベントである。

高コンテキスト下における匂いのコミュニケーションの実験であった。たとえば、冬至のメタファーである柚子を女性にプレゼントした男性がいた。ここで柚子の香りは、「冬至に柚子湯に入ると風邪をひかないというから、これで体をあたためてください」という思いやりを相手に運ぶメディウムとなる。

4: SCENT-DRIVEN MOVEMENT

視覚的要素を排除し、匂いだけを頼りに空間を動き回る体験ができる作品群である。人間も犬のように、右に左にクンクンすることで、濃度の差異を感じ取り、匂いのソースへと辿り着くことができる。全方向嗅覚 OMNI DIRECTIONAL SMELLING の実験でもある。

例:

INVISIBLE WHITE

角のない、影のない、遠近感のない white out した空間で、匂いだけを頼りに歩き回る作品。3つの匂いを空間中に流すとき、タイミングをずらすことにより、匂い同士の混ざり方を常に変化させた。RGBのように「見えないグラデーション」が作られ、一歩前に進むと常に違う香りがする空間が生まれた。

OLFACTORY LABYRINTH VER.2

入り口から常に同じ匂いを辿ると出口にたどり着くという、ほんものの迷路。トータルで4種の香りを嗅ぎわけなければいけない。

OLFACTORY LABYRINTH VER.4

9x9のマトリクス状に吊り下げられたボトルを嗅ぎながら、3本の見えない「桜の木」を探すという、お花見の陣取りゲーム的な要素のある迷路。桜に近くなる程、匂いが強くなる。匂いの刺激と濃度に関して、フェヒナーの法則(ログ対数)を応用。

FUTURE PERSPECTIVES

作家とは、そのエステティックの力で、「人間とは何か」「生きるとは何か」などのクエスチョンを、作品を通して問い続ける人であると考えている。私自身がそれをトランスレートするならば「人間の嗅覚にはどんな可能性が秘められているか」という問いかもしれない。

もしアカデミックな論文手法に例えるなら、作家としてのスタンディングポイントが「仮説」といえるかもしれない。そして、できあがあった作品が「答え」であり「結論」になる。そして順序は逆になるが、オーディエンスの体験そのものが、「証明」である。作家は、オーディエンスが作品とどうやりとりするかを、あれこれ想像しながら「結論」を形作っていく。

最近は TANGIBLE SCENTS のように、嗅覚と触覚・視覚の間を詩的に探る作品を作り始めている。このような実験をたくさん重ね、人間の嗅覚の可能性をとことん追求し、さらに進化させることができたらと考えている。

 嗅覚アートについて (2008年の文章)

04私は自らの芸術活動において、匂いを媒体として扱い、嗅覚をアートの対象としています。一般的に匂いや香りは、香水やトイレタリー製品、フレーバーやアロマテラピーなど幅広く実用的に応用されています。一方でわたしが焦点を当てているのは、匂いにより引き起こされる記憶や感情、そして嗅覚が新たに切り開く知覚や体験などです。まるで絵を展示するように、作品として匂いを提示しています。


現在アートの世界においてこうして嗅覚に真っ正面から取り組む作家はほとんど皆無といえます。それもあり、世界初と称された匂いのみで構成された展覧会 “ If there ever was”2008年イギリス) に作家として参加するという栄誉をいただきました。09 

現代において世界のほとんどの作家やパフューマーが既製品の香料を用いるのに対し、私はその香料を一から作っています。一般的に商業的には安価で安定していて品質管理のしやすい合成香料が好まれますが、私はその正反対である天然香料にこそ焦点を当て、素材から匂いを抽出しています。匂いをメディウムとして扱うために、素材のレベルで何が起こっているのかを知りたいからです。天然香料には合成香料とは比較にならないような深遠さがあります。合成香料は単一分子で構成されるか、あるいはいくつかの種類の足し算で作られるものですが、天然香料にはもともと数えられないほどの種類の分子が含まれています。例えばイチゴ味のフレーバー付きキャンディがしばしば本物のイチゴの味とかけはなれているのを、誰もが経験として知っているでしょう。

私は精油を抽出する蒸留法や油浸法など化学的手法を参考にしながら、天然の匂いを自ら抽出しています。ときに調理の化学なども参考にしています。展示の際、抽出した匂いを揮発させるには、アトマイザーや香水瓶、線香、マイクロカプセルによる印刷など様々な形をとります。インスタレーションやライブ・パフォーマンスという方法をとることもありますが、ワークショップという形で体験を共有する方法をとることもあります。領域横断的なパフォーマンス作品で、匂いを空間薫香するなど、舞台作家とコラボレーションすることもあります。

近年、地域特有の匂いについてリサーチし、オン・サイトでの抽出を試みています。その対象となる匂いは食べ物や飲み物、素材、人、植物、環境などの日常の匂いです。その結果として形となった作品群が Aromatic Journey (http://www.ueda.nl/aromatic_journey1) シリーズです。地域特有の文化を、匂いといった手法によって探求し経験するものです。作品を鑑賞する人々は、匂いを嗅ぐことで、その文化のエッセンス(核)を直感的に体験します。これら作品としての香水は、着用するためのものというよりは、匂いそのものが鑑賞の対象です。記憶やイマジネーションを想起させる装置でもあります。地域外の人にとってエギゾチックな匂いはすなわち地域を再発見する匂いでもあり、その地域性を掘り起こす試みです。

嗅覚の嗜好はもともと地域に強く根付いたものです。匂い分子が揮発しやすいというその化学的性質に所以します。そのためそれぞれの土地には固有の匂いの表徴が存在します。しかし現代における急激なライフスタイルの変化により、これら自然な日常の匂いも消えつつあります。大量生産された合成香料が日常のいたるところを支配し、もともとの匂いに取って変わるのです。日本の路上でもヨーロッパのようにシャネル5番の匂いがしますし、同じ石鹸が世界中どこでも手に入ります。このような匂いの世界画一化は急速に進んでいると考えています。

匂いに取り組み始める前は、グローバル意識と言葉を超えたコミュニケーションをテーマとしながら、メディア・アートの作品を作ってきました。2003年から1年間オランダとインドネシアの公共空間に常設展示した Hole in the Earth という作品がその一例です。双方向の映像ストリーミング技術を応用したもので、「地球の穴」の両端同士で映像と音声を交換し合うといった作品です。その設置のためにインドネシアを訪れたとき、そこの道ばたの匂いを、良い匂いも嫌な臭いもまとめてストリーミングしたいと思ったものでした。それが匂いに取り組むひとつのきっかけとなり、現在に至ります。

20074月より、ベルギー・ブラッセルを拠点としたアート & サイエンスの実験的 研究所 FoAMにて、アーティスト・イ ン・レジデンスしています。匂いの研究に対し2007年、ポーラ美術振興財団から在外研修助成をいただきました。


 
 
 
 
 

経歴 (2010-2018): ダウンロードリンク:

https://drive.google.com/open?id=1dR2PvAZIIpZejGoVDNoVIiWeyMGZzC6J

 

経歴 (-2010 まで)

[展覧会とワークショップの抜粋]

 

2011 exhibition (curatorial) Palm Top Theater, at 24.h. by Stedelijk Museum Amsterdam, Amsterdam NL, 31.03.2011.

2011 performance Sukebeningen, at Steim, Amsterdam NL, 20.03.2011.

2011 workshop Edible Perfume, organized by Sensational Mix, Rotterdam NL, 24.02.2011.

2011 performance Sukebeningen, at Scheltema, Leiden NL, 12.02.2011.

2011 workshop Palm Top Theater, organized by International Film Festival Rotterdam, Rotterdam NL, 03.02.2011.

2011 exhibition (curatrial) Palm Top Theater, hosted by V2_ Institute for Unstable Media, as a part of International Film Festival Rotterdam, Rotterdam NL, 21.01.2011. - 13.02.2011.

2011 exhibition Aromascape of Singapore, organized by Fringe Festival, Singapore, 05-16.01.2011. (at Singapore Art Museum)

2010 workshop Aromascape of Singapore, organized by Fringe Festival, Singapore, 28-29.12..2011.

2010 workshop Paint with Your Nose, NL, in Amsterdam, NSDSK Theaterdagen voor dove en slechthorende peuters en kleuters

2010 workshop Paint with Your Nose, NL, in Utrecht, NSDSK Theaterdagen voor dove en slechthorende peuters en kleuters

2010 workshop Paint with Your Nose, NL, in Zwolle, NSDSK Theaterdagen voor dove en slechthorende peuters en kleuters

2010 workshop Paint with Your Nose, NL, in Rotterdam, NSDSK Theaterdagen voor dove en slechthorende peuters en kleuters

2010 workshop Paint with Your Nose, NL, in Eindhoven, NSDSK Theaterdagen voor dove en slechthorende peuters en kleuters

2010 workshop & exhibition AROMASCAPE OF EINDHOVEN, Dutch Design Week

2010 workshop 'SMELL LISTENING', Camera Japan Festival, Rotterdam, NL, 2010.10.

2010 solo-exhiition OLFACTOSCAPE, at Inframince, Osaka, Japan, 10.2010.

2010 workshop 'Lunch for the Muted Senses', organized by NPO Neurocreative Laboratory, Tokyo, 08.2010.

2010 performance 'The Tatooer', collaboration with Scheveningen, Het Nutshuis, Den Haag, NL, 04.06.2010.

2010 giving a workshop, collaboration with Ukiyo project, Brunel University, London, UK, 01-03.06.2010.

2010 premier of a city expedition 'SMELL x ILLUSION', Urban Explorers Festival, Dordrecht, NL, 21-23.05.2010.

2009 artist in residence / panelist, Artist Summit Kyoto, hosted by Kyoto Zokei Art University, 19-20.12.2009

2009 SCENTS OF HOLLAND at FoAM, as a part of BAZAAR, in Brussels Belgium, 29.10.2009

2009 eau de parfum PERFECT JAPANESE WOMAN in the exhibition PULS during the Dutch Design Week in Eindhoven, 17.10.2009 - 25.10.2009

2009 Edible Perfume Workshop @ CBK Dordrecht (as a part of Camerajapan Festival), 10.10.2009,  CBK Dordrecht

2009 Workshop & dinner in a restaurant style (Japanese) Dinner for Musted SensesCamera Japan Festival, Rotterdam NL, 27.09.2009,

2009 Workshop Walk n' Sniff, organized by Wijken voor de Kunst, Leiden NL, 22 & 23.08.2009

2009 Workshop The Scent of Edo Geisha, organized by AOF Karoino aru Seikatsu , on 02.08.2009

2009 Workshop SMELL BAR, organized by WonderArt Production at Chiriro Museum in Tokyo, Japan, on 01.08.2009

2009 exhibition SMELL BAR, organized by WonderArt Production at Mitaka City Arts Center in Tokyo, Japan,  23-28.08.09.2009

2009 exhibition at World Technology Network Summit, NY USA, 15-16.07.2009

2009 Exhibition Hollad Mania at Lakenhal Leiden City Museum, 16.05.2009.-30.08.2009

2009 workshop Edible Perfume, Tokyo, Japan

2008 workshop Edible Perfume | Open Kitchen, FoAM, Brussels, Belgium

2008 Open Sauces (contributing a course for the gastronomic event), FoAM, Brussels, Belgium

2008 Body Odor No. 5 (performative installation), Garaj, Istanbul, Turkey

2008 eau de parfum PERFECT JAPANESE WOMAN Camera Japan Festival, Roodkapje, Rotterdam, The Netherlands

2008 Drop a line (performative installation with Heiner R. Avdal), Kaaitheater, Brussels, Belgium on 30 & 31.08.2008.

2008 SMELL BAR, Electric-Eclectics Festival, Meaford, Canada

2008 7 smells - the perfumes of the dancers' body odor - commisioned by eg | pc, releasing at the Holland Festival 2008

2008 If There Ever Was (匂いのみの展覧会)Reg Vardy Gallery, Sunderland, イギリス

2008 Painting with Your Nose (ベビーと幼児のための匂いワークショップ)Babelut Festival, Neerpelt, ベルギー

2008 The Scents of Holland (香水シリーズ), De Kunstsuper, Rotterdam, オランダ

2007 Aromatic Journey #2 - オランダの匂いを抽出するワークショップ (ワークショップ & 展示Corrosia, CBK Flevoland, Almere, オランダ

2007 Drop a Line (パフォーマンス・アーチスト Heine R. Avdal の作品) scent artist としての参加Vooruit, Gent, ベルギー

2007 Aromatic Journey #1 - my memories of Japan - , Artedove, Fosdinovo, イタリア

2007 Aromatic Journey #1 - my memories of Japan - , co-exhibition OL-FACTORY with Martina Florians, Erasmus University Gallery, オランダ

2007 Skulpturenpark(プロポーザル), Berlin, ドイツ

2007 Red Wine Chromatography, Aanschouw, Rotterdam, オランダ

2006 Hole in the Earth (ドキュメンテーションの展示), Electrohype, Malmo, スウェーデン

2006 Aromatic Journey #1 - my memories of Japan - Artstore Rotterdamオランダ

2005 Aangenaam (常設展示中) , ロッテルダム Mozaiek小学校にて、 詩人Jules Deelderの詩をもとに

2005 Hole in the Earth , 北京 International New Media Arts Exhibition and Symposium, 中国

2005 Menu for A Nose NIKA紅茶/コーヒー専門店での展示, 制作:Kunstroute Noord Rotterdam、 オランダ

2004 Deconstructing Okonomiyaki, 制作:ロッテルダム市立劇場、オランダ

2003-2004 Hole in the Earth (常設展・終了済み), 制作:CELL with Jejaring ArtnetworkersDaarut Tauhid モスク (インドネシア・バンドゥン) Diergaardesingeldriehoek (オランダ・ロッテルダム)にて

2003 Let the Rain PaintQI-Kunsteiland Rotterdam、オランダ

2003 Touch-Me-GentlyQI-Kunsteiland Rotterdam, オランダ

2001 Hole in the Earth (試作), 制作:CELL with Biz-Art、 上海図書館 (中国) Diergaardesingeldriehoek (オランダ・ロッテルダム)にて

2000 TELETEXT ART, オランダ国営放送の文字放送ページにて、オランダ

1999 ごみ変換展, アースビジョン/国連大学

1999 川辺川ダム~ダムが消す風景・造る風景~, 慶応大学SFC大学院棟

1998-2000 インターネットにつながった電光掲示板プロジェクト (常設展・終了済み), 藤沢慶応前郵便局

1998-2000 びっくりポスト (常設展・終了済み), 藤沢慶応前郵便局

1997-1999 漂着重油交換展, 日本全国 14 箇所の海岸にて

[学歴]

2007 PRODAROM-ASFO Grasse Institute of Perfumery 調香師養成サマー・コース

1999 慶応義塾大学大学院 政策メディア研究科卒 指導: 藤幡正樹(メディア・アート)

1997 慶応義塾大学環境情報学部卒

1991-1992 アメリカ合衆国テキサス州ペアーランド高校に奨学生として留学

[受賞/助成]

2007 ポーラ文化振興財団 在外研修助成金受給

2000 文化庁 在外研修助成金受給

[講師/プレゼンテーション]

2008 Willem de Kooning Academy, Rotterdam, The Netherlands

2007 Willem de Kooning Academy, Rotterdam, The Netherlands

2007 FoAM researcher's gathering, Brussels, Belgium

2006 Piet Zwart Institute, Rotterdam, The Netherlands

2004 Art Academy, Bandung, Indonesia

2000 Dog in the Backyard (CBK), Rotterdam, The Netherlands

1999 Mediamatic Salon, Amsterdam, The Netherlands

1999 Keio University, Yokohama, Japan

1998 Japan Design Forum, Fukui, Japan

[作品制作外での活躍]

2002 山口情報芸術センター研究員

1999 東京芸術大学先端芸術研究科 非常勤講師(メディア・リテラシー)

1998 よりメディア・アートの分野での翻訳・通訳多数(NHK「日曜美術館」同時通訳、雑誌「本とコンピュータ」他)

[プレス・カバー]

Aromatic Journey #1

  • オランダ: Ketel TV on Rotterdam TV, 26 Sep 2006

Aangenaam

  • オランダ:Antenne TV

  • オランダ:CBKマガジン Rotterdam januari-maart 2006

Menu for a Nose

Touch Me Gently

  • オランダ:全国紙 De Volkskrant, 2003

Hole in the Earth

川辺川~ダムが壊す風景・ダムが造る風景~

  • 朝日新聞全国版社会面, 朝刊 13 Sep 2005

  • 熊本新聞, 1999

ゴミ交換展

  • 東京新聞, 1999

漂着重油交換展

  • 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、TV番組など多数 1998