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MAKI UEDA

Maki Ueda (JP/NL)
Olfactory Artist

JAPAN HOUSE Sao Paulo - fotos  de Rogério Cassimiro (5)

Born in Tokyo, Japan, in 1974. Currently based in Okinawa and Tokyo, Japan.

Olfactory artist Maki Ueda (JP/NL) focuses the spectator’s attention on her fragrant gestures by minimizing the influence of the other senses. Her current research explores olfaction in relation to space and movement resulting in strong, often universal, approaches. She focuses on the pure experience of a smell instead of a more contextual or narrative approach. In addition to her own creative work, she teaches courses on olfactory art at the ArtScience Interfaculty of The Royal Academy of Art and the Royal Conservatoire, The Hague (NL) since 2009.

She has developed a unique combination of chemical and kitchen skills in order to extract the scents of daily life, including foods, ambient aromas, and bodily scents. She creates scents that capture childhood, identity, a mood, or a historical event. The results of her experiments take the form of olfactory installations and workshops.  She has inspired and influenced many olfactory artists for making her process and recipes “open source” on her blog, and became one of the most famous olfactory artists (listed on the wikipedia page “olfactory art“)

Maki Ueda studied media art under Masaki Fujihata at The Environmental Information Department (B.A. 1997, M.A. 1999), Keio University, Japan. She received a grant from the Japanese government in 2000 and from the POLA Art Foundation in 2007. She has been based in The Netherlands from 2000 till 2011. She learned perfumery at Grasse Institute of Perfumery in 2008.

She has been nominated for the Art and Olfaction Awards Sadakichi category, the world’s olfactory art hall of fame, for five consecutive years so far, winning in 2022.

Wikipedia page: “Maki Ueda”

Online Portfolio: www.ueda.nl

Online CV

Atelier and Online Academy: www.pepe.okinawa

Awards:

2009 – Nominated for The World Technology Awards Category: Art (NY, USA)
2016 –  The 3rd Art and Olfaction Awards Finalist (Sadakichi Award) for ‘The Juice of War
2018 –  The 5th Art and Olfaction Awards Finalist (Sadakichi Award) for ‘Olfactory Games‘, The Art and Olfaction Awards
2019 –  The 6th Art and Olfaction Awards Finalist (Sadakichi Award) for ‘Tangible Scents – Composition of Rose in the Air
2020 – The 7th Art and Olfaction Awards Finalist (Sadakichi Award) for ‘Olfactory Labyrinth ver. 5
2022 – The 8th Art and Olfaction Awards Winner (Sadakichi Award) for ‘Viral Pafum
2023 – The 9th Art and Olfaction Awards Finalist (Sadakichi Award) for ‘Aerosculpture’
2024 – Commissioner for Cultural Affairs Award (Japan)

Specialities:

• Olfactory installations (as well as site-specific and open-air installations)

• Perfume artworks

• Research on the sense of smell and other senses

• Olfactory performances

• Olfactory workshops (for both adults and children)

• Food art event/ws with the focus on the sense of smell and molecular gastronomy

• Teaching “olfactory art” at art schools and universities

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Dog’s Nose – yet to be translated

― 匂いの風景を記録・再生するバイオロギング・システム ―

Dog’s Nose は、ケミカル・センサーを装着した犬が匂いの風景(スメルスケープ)を記録し、それを後にデジタル制御された嗅覚再生システムによって再構成できる、多種バイオロギング・システムである。本プロジェクトは、環境センシングとデジタルメディアを組み合わせることで、嗅覚的環境を記録し共有する方法を探る。

犬の鼻の近くの空気は小さなチューブを通して採取され、リコーが開発した携帯型装置 FAIMS(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometry) に送られる。犬が周囲を自由に動き回るあいだ、空気中の分子パターンが測定され、デジタルデータへと変換される。犬の移動は一種のバイオロギングとなり、動物自身が環境センシングの多種間的な担い手として機能する。バイオロギング技術は、動物行動や環境条件をモニタリングするために生態学研究で広く用いられているが、Dog’s Nose はこのアプローチを感覚の記録へと拡張する。

収集されたケミカル・データは、時間軸に基づく嗅覚および視覚の再生システムにマッピングされ、犬が記録したスメルスケープを、時間軸を基に再構成する。これにより人間の観客は、犬が遭遇した環境を追体験することができる。

スメルスケープのデータはまた、空間軸の視点からも共有される。シンプル化された香りの表象が、マイクロカプセル技術を用いてフロアマップ上に印刷される。この触覚的インターフェースにより、あらゆる年齢の来場者が空間的にシミュレートされたスメルスケープを探索することができる。

また本プロジェクトには、犬の千代子が案内する参加型の都市散歩 「千代子ウォーク」 も含まれている。人間よりはるかに敏感な「野生の鼻」とともに歩くことで、参加者は匂いを通して都市を探索し、都市を化学的シグナルが交差するダイナミックな場として知覚する。

本プロジェクトは、現代のメディア・インフラに存在する欠陥にも着目する。すなわち、視覚や聴覚の環境は記録・再生が可能である一方で、嗅覚は環境知覚の基本的要素であるにもかかわらず、依然としてメディア技術の中でほとんど扱われていない。本プロジェクトは、嗅覚の環境を環境知として共有する、新たな方法を提案するものである。

千代子ウォーク

千代子とは上田の犬であるとともに、嗅覚の師匠でもある。このフェーズでは、千代子にリコー社のモバイル気体計測器「FAIMS」を装着し、嗅覚の赴くままに渋谷・原宿エリアを各2時間、計6時間歩いてもらった。

計測日 / エリア
2025年10月15日/ 渋谷〜代々木公園〜明治通り
2025年12月15日/ 原宿
2025年12月16日/ 代々木公園
2026年3月23日(予定)/  荻窪

FAIMSはいわば、「空気のスキャナー」。人間が嗅げる匂いも嗅げない匂いもごっそり吸い込み、空気質を計測する。犬もまた人間の何倍も嗅覚が優れているといわれる。このフロアでは、人間では体験し得ない街の「匂いのレイヤー」を、FAIMSと犬の力を借りて擬似体験できるよう設計した。

計測結果のインタラクティブな再生においては、デジタル噴霧技術(Aromashooter)を使用。そして、マイクロカプセルという技術で縮小版の地図に定着させて、フィジカルに遊べるようにした。世界に誇るべき日本の嗅覚技術がここに結集しているといえる。

再生・再現にあたっては、人間の嗅覚疲労と展示環境・規模を考慮し、データを特定の方法でデフォルメしている。視覚情報の再生においてはRGBのような「原色」があるが、嗅覚においては、再生のための「原臭」が明らかになっていない。そのためここでは、色のRGBになぞらえ、3種の「原臭」を設定している(同等分子量の香料を使用)。

千代子の嗅覚世界(時間軸)

トラックボールを回して、千代子の散歩を体験してみよう。
渋谷・原宿を計6時間歩いた「千代子ウォーク」の中から、空気質データの大きな変化と千代子の反応が強く結びついた7つの場面を選び出した。空気中の匂いを分子の大きさによって L・M・S に大まかに分類し、近い性質をもつ芳香分子で再現している。
(フロアマップに示された7つのポイントも参照)

表示名色での例え分子の大きさ 再生香料
大 (L)赤(Red)インドールなどの重い分子アニマリック・アンバー系
中 (M)緑(Green)中間.
人類が最も敏感で繊細に嗅げる分子量帯。
柑橘系・グリーン系
小 (S)青(Blue)小さい。人類には嗅ぎにくい、ほぼ「ガス」のような小さな分子量帯。水溶性の分子多め。オゾン系・マリン系

千代子の嗅覚世界(空間軸)

千代子が嗅覚の赴くままに歩いたルートを匂いで辿ってみよう! 匂いの変化がわかるかな? 
・靴を脱いで上がってください。
・赤い点線に匂いがついています。マットを這い、犬のようにクンクン嗅いでください。
・服に黒い色がつくことがありますのでご注意ください。
*AR版と同じ香りが使われています。

千代子ウォーク動画アーカイブ 

人間の目から見て、千代子の行動が嗅覚の刺激によると思われたシーンを選び出して編集した。
(approx. 10 min.)

結果・考察

展示では、観客になるべく「見て、嗅いで、再体験してもらう」いわゆる能動的な体験と考察を重要視したため、言葉による説明は極力避けた。

千代子の行動を観察した結果は以下の通り:
・人間は散歩する時、視覚により情報を得て行動を決めるが、千代子にとってはそれが嗅覚であった。よって人間にとっては何ら「映えない」ものに興味を示した。
・渋谷スクランブル交差点や竹下通りの人混みでは人がたくさんの匂いを運んでいると思われ、千代子の嗅覚が錯乱するのか、ひどく右往左往し、まっすぐ進むのが難しかった。
・都会には地面の排水溝の穴やビルの隙間などが多数あり、千代子はいちいちそこに興味を示した。
・各店舗の正面から流れてくる匂いをチェックするため、千代子は店舗にいちいち入って行こうとするため、明治通り沿いは特にまっすぐ進むのが難しかった。
・千代子が興味を示したのは、飲食店にとどまらず、ブランドショップや時計ショップ、雑居マンションなど多岐に渡った。
・千代子は、空気の入り乱れる「交差点」や「辻」においては、長時間滞留し、各方面から流れてくる空気を嗅いでいた。
・自由に歩かせてみたものの、それほど遠くに行くわけでもなく、一度通ったところを再びぐるぐる回るなど、「見回り」をうかがわせる。
・竹下通りにはカピバラカフェやピッグカフェ、サモエドカフェなどの動物カフェが多く存在し、入り口で「出待ち」することもあった。
・代々木公園ではきょろきょろせず、直線に歩くことが多かった。
・原宿に比べると、枯葉の特定のスポットに直進して枯葉を掘り返したり、穴を通過した後にUターンして穴を嗅いだり、嗅覚由来の行動と見られる行動がわかりやすかった。
・人間はお昼時にガーリックの匂いがすると魅力的に感じるものであるが、千代子の場合は特に興味関心がなさそうだった(明治神宮前交差点にて)

また、FAIMSの計測結果と、千代子の行動と結びつけたとき、以下のことが言える。
・渋谷駅周辺はアンモニアの数値が高い。(人、排気ガス、アスファルトなど様々な要因があるとのこと。)千代子の右往左往する行動に関係ある可能性もある。
・車通りの多い大通りでは大きな分子が計測される。これも千代子の右往左往する行動に関係ある可能性もある。
・日によるが、概ね代々木公園には軽めの分子が広がり、多くの変化があるわけではない。千代子も右往左往する行動は少なめで、わりとまっすぐ歩いた。一方で原宿は変化の起伏や種類が大きく、千代子の右往左往する行動と一致する。
・代々木公園では千代子の行動パターンとFAIMSの計測数値の変化が顕著に結びつくことも多かった。都市では他のさまざまな要因が介入しているとも考えられる。

これらの結果から、以下のことが考察できる。
・都市には人間に嗅げない匂いのレイヤーが広がる。
・穴や溝、ビルの間や自販機の裏など、人間には嗅げない匂いの滞留空間が都市には多数存在し、千代子のような犬はそういうところにこそ興味を示す。
・都市は、商業空間に固有の匂いがあり、匂いの戦場である。

リコー社氏本さんの専門的なレポートも参考にしてください。